ビリギャルの著者、坪田信貴さんに聞く「子どもを伸ばす親の在り方と新聞の活用法」【後編】

『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称ビリギャル)の著者で坪田塾の塾長である坪田信貴さんに、子どもの伸ばし方や親としての心構え、新聞の活用法などについてインタビューしました。

 

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人は、理解者に素直になる

坪田さん:塾に来る親御さんの中には、子どもの悪口を言う人もいます。

「うちの子どもの態度がひどくて、どうにかしたいんです。坪田さんの噂を聞いてここに来ました」という方が結構いらっしゃるんですよね。

 

そこまで言われる子って、どんな子なんだろう?と子どもに会ってみると、全然そんなことないんですよ。面白い子だし、ちょっとくらい生意気でも、いいところがあると思うんですよ。でもそれを伝えても、なかなか納得してくれない。


そして、親御さんはじめ、色々な人によく言われてきたのが、「ビリギャルのさやかちゃんってすごく素直でしたよね。素直だから伸びたんですよね?」というコメントです。

ビリギャルのさやかちゃんが素直だったのは事実で、たしかに素直な人は伸びるし、素直じゃない人は伸びないと思います。

ただ、「素直さ」というのは、その人の生まれつきの特性ではなくて、相手によって変わるものです。

素直な人は誰にでも素直で、反抗的な人は誰にでも反抗しているかといえば、全然そんなことはありません。

 同じひとりの人間でも、ある人には素直でも、別の人には反抗的になる――そういうものじゃないですか?

さやかちゃんも僕やお母さんには素直だったけれど、お父さんや学校の先生にはすごく反抗的でした。


ーその違いは、どうして生まれるのでしょうか?

 

どういう人に対して素直になるかと言うと、自分のことを理解してくれている人、あるいは、理解しようとしてくれる人には人は素直になるのです。

だから一番の親友にはみんな素直に話すし、理解しようともせずに上から目線で命令してくる人に対しては、誰でも反抗的になります。

 

ーそうですよね。思い当たる節があります。

 

ですから、その子に寄り添って理解しようとすると、どんなに反抗的だと言われている子も、なんでもしゃべってくれるようになります。

子どもだけではありません。親御さんに対しても、同じように理解しようと寄り添うことで、親御さん自身も思っていることをなんでもしゃべってくださる。

それぞれの話を聞いていくと、単純に親子が理解し合えていないだけで、子どもは素直ないい子だと分かります。

 

賛否両論あるかもしれませんが、そういう意味ではいわゆる悪人といわれる人でも、自分の子どもや奥さん、あるいは自分を理解してくれる人間に対しては、実はいい人なんだろうなと思います。

話を戻すと、相手を少しでも理解しようとする、相手の良さを認識しようと働きかけるだけで、素直じゃない、かたくなだと思っていた相手の態度が変わるのであれば、その方がお互いに幸せじゃないですか。とてもシンプルです。


相手に寄り添う練習をする

―坪田さんはもとから、相手に寄り添う接し方ができていたんですか?

 

坪田さん:元々そうだったわけではないですし、僕だって喧嘩することはあります(笑)。

ただ、重要なポイントは、人間の心理にはレイヤー(階層)があることを理解することだと思います。

聖人のような人がいたとしても、そうではない部分は絶対あると思いますし、その人を憎んだり、悪い人だという人も必ずいると思うんですよ。

 

僕にだって「この人は嫌いだ」と思う相手は当然いるわけです。でも、良い部分を見つけられるように、今でも努力していて、ずっと練習を続けているようなものです。 

よく親御さんが、「その子の良いところを見つけて褒めようとするけど、できないんです」っておっしゃるんですね。

僕は「できないから練習するんです」

「逆にできていたら、やる必要はないんです」とお伝えします。


テニスができない、出来ないからやらないではなくて、できるように練習するわけです。 

勉強もできるようになりたいと思うのであれば、たとえ今はできなくてもやろうとする、やれるように練習するのは、大人も子どもも関係なく、当たり前のことであり、とても大切なことです。


新聞は全部が小論文。
「事実」と「主観」を分けて読む

―新聞に関して、子どもたちにはどのように指導されているのですか?

 

坪田さん:入試科目に小論文がある学部だったら、新聞は必ず読んでおかないと、とてもじゃないですが合格は難しいです。

 

新聞は全部が小論文なので、受験にベストなんですよ。

ある題材を元に書き手がどう思ったか、あるいは、事実だけが書いてある。生徒には、事実だけを書いている部分と、書き手の主観で書いている部分は、必ず分けて読むように伝えています。

事実は青で、主観は赤で、線を引かせてみると子どもは「この新聞って、主観が多くないですか?」と気が付くようになります。僕は、一緒に新聞に線を引きながら「この記事に関しては、そういうふうに読み取ってほしいと印象付けたいんじゃないのかな?」と話し合っています。

 

勉強できる子の食卓では、ニュースが話題になる

―新聞は子どもの学力アップにご家庭でどのように生かせるでしょうか?

 

坪田さん:僕は、勉強ができない子を指導することが多かったのですが、できる子も当然指導しているんですよ。

いちを聞いて、本当に百を知るみたいな、すごくできる子もいます。

その子たちに、家庭の中でどういう教育を受けたのか、親御さんとどういう接し方をしているのかなどを聞いて、いろいろリサーチしました。

 

そこで分かったのは、勉強ができる子の家庭は、食卓でその日のニュースなどについてどう思うかという話をしているところなんですよ。

そういう子は、本当に優秀です。だから、新聞を使わない手はないと思います。


新聞の話題は、子どもの興味に関連づけるひと工夫を

―新聞やニュースを題材に話したときに、子どもが興味を持たなかったら、親はどうしたらいいのでしょうか?

 

坪田さん:ピーマンが嫌いな子にピーマンを食べさせるのと同じなんですよ。

どうしてピーマンが嫌いかというと、苦いからです。じゃあ、そのピーマンを子どもに食べさせたいなと思ったらどうしますか?  生で食べさせようとする人はなかなかいないですよね(笑)。

 

―それはしないですね(笑)。


では、嫌いなものを子どもに食べてもらうためにどうするかと言うと、例えば、その子が好きなものや興味があることと組み合わせるんです。

ピーマンを食べさせたければ、ピーマンの肉詰めを作ってあげたり、細かく刻んでピーマンだと分からないようにします。

「これおいしいね」って子どもが言ったら、「実はピーマン入ってるんだよ」と教える。すると、「えー!ピーマンおいしいじゃん!」となる。

それと全く同じことです。新聞やニュースになぜ興味を持てないかというと、「生」で与えてるからじゃないですか。

単純に「新聞を読みなさい」と言うのは、ピーマンを生で食べさせよう、無理やり口に入れさせようとして、嫌いにさせているのとまったく同じなんですよ。

 

―例えば、4コマ漫画から読ませたり、「これはお父さんの会社のことなんだよ」と関連させながら見せる、という感じですか?

 

坪田さん:そうです。例えば、政党が合流する時に、「これはどういうことかと言うと、嫌いな友達グループ同士が取りあえずくっつきました。どうなると思う?」って聞いたら、「喧嘩すると思う」と答えます。「そうだよね」と、身近なことでイメージができるから、興味が生まれます。

 

ーそれは面白いですね。わかりやすいです。


要は、味付けを変えたり刻んだりして、ある程度調理をして渡すということをするだけです。

 

子どもと過ごす時間はわずか。この瞬間を楽しんでほしい

―いま、小さいお子さんを持つ親御さんに伝えたいことはありますか?

 

坪田さん:例えば「お子さん何歳ですか」と聞かれて、「3歳です」と答えると、「一番かわいい時期ですねー!」って必ず言われるじゃないですか。

たとえば生後5か月でも「本当にかわいらしい時期ですよねー」って言われるんですけど、多分どの年齢でも言われるんですよ(笑)

みなさんが嘘を言っているわけではなくて、子育てがひと段落してから振り返ると、子育ての全ての時期が、じつは「一番かわいい時期」なんだっていうことを、僕はすごく感じています。

 塾に来られる親御さんのなかには、いまお子さんが高校生で受験生、さらに思春期で生意気で喧嘩を沢山して大変だと思っておられるかもしれない。でも、子どもが30歳になった時にアルバムを見たら、子どもが高校生の頃は、「すごくかわいかったな」って絶対に思うはずです。


ーどこの親御さんもそうですね。うちの親も言っています。


何が言いたいかというと、実際に子どもと一緒にいる時間って18年ぐらいしかないんですよね。

 

今は大変で、腹も立つことも多いかもしれないけれど、親元を離れるまえのお子さんとの時間を楽しんでほしいです。

一つ一つの言葉を大切に紡いでほしいですし、お子さんがどれだけ生意気なことを言っても、その瞬間がいかに大切な素晴らしいものなのかを改めて感じてほしいと思います。


―最後に、坪田さんの今後の夢や展望を教えていただけますか?

 

坪田さん:僕の夢は、実はずっと変わらなくて、世界史の教科書に載りたいと小学校5年生ぐらいのときに思ったんです。

塾の先生をやり始めてからは、その夢が、「自分が世界史的なことを成し遂げて教科書に載る」ということから、「僕の教え子たちがそれぞれ自分の得意なことや好きなジャンルを見つけて、世界史に載るような人物になる」というものに変わりました。

 

そして、彼らが伝記を書くタイミングで、ある子が「中学の時に出会った坪田先生が…」とか、別の子も「大人になって出会った坪田さんという人がいて…」というように、僕から影響を受けてこうなりましたという風に書いてくれることを願っています。

 

200年後ぐらいの歴史家が、あそこにもそこにも「坪田」って書いてあるし、「この坪田という人物は何者なんだ?」と言う(笑)。

そういう形で世界史の教科書に載れたらいいなと思います。

そのためには、これから出会ういろんな人といい関係性を築いていきたいですね。



ビリギャルの著者、坪田信貴さんに聞く
「子どもを伸ばす親の在り方と新聞の活用法」【前編】


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