母・主婦として社会問題とどう向き合う?眞鍋かをりが「虐待防止」に取り組むワケ

仕事に追われた20代を経て、現在は1児の母として仕事と家庭を両立している眞鍋かをりさん。現在は「7割主婦・家庭中心」のバランスを持ちながら、コメンテーター等のお仕事で「母・主婦としての視点」から情報を伝える立場でもあります。


また、眞鍋さんは昨年から児童虐待防止活動に力を注ぎ、虐待や児童福祉について発信し続けています。今回は子育てで意識していることに加え、児童虐待防止活動や最近気になるニュースについて聞きました。

「あくまで他人」自分と子どもは切り離して尊重しよう

―今、子育てをしている上で大切にされている方針はありますか?


眞鍋さん:子どもは「あくまで他人である」ということを意識するようにしています。出産してすぐ、子どもに対して尊敬のような気持ちを抱いたんです。


―生まれてすぐ!なぜでしょうか?


眞鍋さん:自分と子どもとの「違い」を強く感じたからです。まず、人生のスタート地点からして全然違っていて。私は愛媛県出身なのに対して、子どもは赤ちゃんのときから東京。私は小さいころからずっと都会に憧れていて、「東京の大学に行くぞ!」と頑張る18歳だったのに、子どもはまったく違いますよね(笑)


出生地が都会だからどうというわけではないのですが、「子どもは私より年齢が35歳下なだけであって、人としては自分のほうが負けているかもしれない」と感じて。その瞬間に「自分と子どものことは切り離して尊重しよう」と思いました。


ー「自分とお子さんを切り離して考える」ということは、「こういう学校に行かせたい」「こういう教育を受けさせたい」という希望もないということでしょうか?


眞鍋さん:あまりないかもしれませんね。自分の価値観に自信がないので、それが子どもにとって正解なのかどうか常に疑問に思っているんです。でも、ある程度は親が決めなければいけない部分もあると思うので、押しつけにならない範囲で、子どもの性格や特性に見合った場所を選んであげたいな、と思います。


ーほかに子育てで意識されていることはありますか?


眞鍋さん:叱るときはなるべく感情を乗せないように、アンガーマネジメントをするようにしていますね。


同じ内容で叱るとしても、そのときの自分の感情にまかせて叱ってしまうと、「同じ内容で怒られたのに、あのときはそんなに怒られなかった」「あのときはすごく怒られた」と、子どもの中で矛盾が生じてしまいますよね。叱られる原因が「母親の機嫌を損ねるから」になってしまうのはよくないな、と。


怒りのピークは6秒といわれているので、6秒間ぐっとこらえて冷静さを取り戻すようにしています。どうしても怒りを抑えるのが難しい場合は、子どもが泣いていてもいったん別室に行って、深呼吸してから向き合うようにしています。


ー論理的に理解してもらうには感情は乗せない方がいいということですね。


虐待や児童福祉の問題を社会全体で考えられるようにしたい

ー去年の6月から、エッセイストの犬山紙子さんらとタレントで構成する虐待防止チームとして活動されていますが、虐待防止活動をしようと思った個人的なきっかけはあったのでしょうか?


眞鍋さん:虐待のニュースはずっと気になっていて、目にするたびに「何か役に立てないかな」と思いながら、何をすればいいかわからずモヤモヤしていたんです。そんなときに犬山紙子さんから「タレントの虐待防止チームを作ろう」というお話があって。一人で考えているだけだと生まれなかった発想や行動に移す力が、仲間と話し合って共有することで広がっていきましたね。


ー現在活動されていることをお伺いできますか。


眞鍋さん:「虐待や児童福祉の問題を社会全体で考えるのを当たり前にしたい」という思いで、専門家の方々に取材して見解を記事にするなどの発信活動を行っています。


虐待防止チームを結成してすぐにSNSで「私たちが国に届けますので、児童虐待や児童福祉に関する要望を送ってください!」という発信をしました。そうしたら5000件以上の要望が届いて、当時の厚生労働副大臣に届けることができたんです。


もっと多くの人に日頃から問題意識を持ってもらいたいので、問題に目を向けるきっかけになっていきたいですね。


ー5000件以上はすごいですね!児童虐待防止や児童福祉に対して一般の人でもできることがあれば教えてください。


眞鍋さん:虐待や福祉の問題を社会全体で考えるためには、一人一人が自分の意見を誰かと共有することが大切だと思います。身近な人と話をしたり、SNSで情報を発信・拡散するだけでも大きな力につながるので、「自分一人で声を上げたところで何も変わらない」なんて思わず、積極的に発信や意見交換をしていただきたいです。


福祉の現場は根本の仕組みが不十分

ー眞鍋さんはコメンテーターとしても活躍されていますが、虐待のほかに最近気になったニュースはありますか?


眞鍋さん:やっぱり子育て関連の話題はチェックしていますね。最近だと保育士不足の問題が気になっています。


私の知人にも保育士資格をとっている方がいるのですが、すごく能力があるのに「パートの方が時給が良いから」という理由でパートに移ってしまって。これだけ待機児童が増えていて保育士のニーズがあるのに、賃金の安さが原因で保育の仕事につけないのは国としても損失ですよね。


保育士不足の原因は「労働環境と賃金の安さ」だと感じるので、労働環境を改善して保育士の賃金を上げることによって、もう少し職業的な地位や質が同時に上がるようにしてほしいな、と思います。


虐待問題について調べていても痛烈に感じるのですが、福祉の現場は根本の仕組みが不十分だと感じます。専門家の方々は本当に身を削って頑張ってらっしゃるのですが、予算が不足していてなかなか前進しないんです。


ーどうしたら予算不足を解消できるでしょうか?


眞鍋さん:「なんとかしてほしい」という声を上げることが大事だと思います。まずは問題に目を向けることが重要なので、そこはメディアの力も大きいと感じます。目黒区の虐待事件も、取材していた記者さんが「絶対許せない」と大きく報じたことで世論を巻き起こしたという話を聞きました。私たち自身も声を上げつつ、メディアの活躍にも期待していまね。


新聞のサイエンス系・人類学系記事が面白い!

ーメディアといえば、前編で日々の情報収集について「新聞はすごく信頼している」とお話しされていましたが、新聞の中ではどんな記事が気になっていますか?


眞鍋さん:実は新聞のサイエンス系や人類学系の記事がすごく好きなんです(笑)。サイエンスや人類学というと自分たちにはあまり縁のないイメージが強いですが、実は暮らしや経済にダイレクトに関わってくるところが面白いなと思います。


ー具体的にどんな内容でしょうか?


眞鍋さん:人類学の話題だと、縄文時代の子育ての話が面白かったです。縄文時代は3歳くらいまで、それも母親だけでなくいろいろな女性の母乳を飲んでいたために、多くの免疫を獲得できていたらしいんです。人間はもともと集団で子育てをする生き物であって、逆に今のような核家族での子育てがどれだけ異常かということを考えさせられました。


「人間はもともとはどんな子育てをしていたのか」について考えることは、より良い社会のあり方に繋がると思います。


ーおもしろいですね。他に印象に残っている記事はありますか?


眞鍋さん:「恐怖の感情は遺伝する」というマウス実験の記事も印象に残っています。まず、マウスに電気ショックを与えながらサクラの香りをかがせ、その匂いを恐れるように訓練します。そうするとそのマウスの子どもは、両親と同じくサクラの香りに恐怖を感じて避けるようになるんですって。


私は先端恐怖症なのですが、もしかしたら祖先は刃物で脅されたりしたのかな……?といろいろ妄想して楽しかったです(笑)


ー子育てに忙しい女性にとって、どうしたらもっと新聞が気軽な存在になると思いますか?


眞鍋さん:子育てで忙しいママだと紙面を毎日読むのは難しいかもしれないので、新聞アプリも利用するといいのではないでしょうか。いろいろなアプリがあって、便利ですね。


新聞の良いところは、自分の興味の範囲外からも情報を収集できる点だと思います。ネットだと自分の興味がある範囲で能動的に情報を調べられますが、どうしても偏ってしまうことも。


これからたくさんのことが変化していく時代になると思うので、ネットと新聞でバランスよく情報収集をすることが大切だと思います。忙しい中でも情報収集をしつつ、今の自分を受け入れて人生を存分に楽しんでいきたいです。