脳科学者 茂木健一郎さんに聞く「活躍できる子どもを育てる新聞の活用法」【後編】

脳科学者で、7月15日に『脳科学者が子どものために考えた 夢をかなえる力ののばし方』『クオリアと人工意識』を出版された茂木健一郎さんに、脳科学の視点からの子どもの育て方や新聞の活用法などについてインタビューしました。


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いいお母さんは子どもを信頼している

―親子のコミュニケーションでしてはいけないことはありますか?


茂木さん:教育熱心なお母さん1000人ぐらいと話してきたなかで、一番いけないのは条件付きで子どもを認めるお母さんだと感じます。

つまり、「勉強するといい子、勉強しないと悪い子」みたいな形で子どもを縛ろうとするお母さんが、結局は子どもの伸び率を下げていると思うんです。


一番いいお母さんは、子どもを信頼しているお母さんです。

例えば、目の前で子どもがゲームをやっているとして、「なんで勉強しないでゲームやっているの」と言ってしまうお母さんは、子どもの可能性を摘んでしまうんです。


そうではなくて、「あ、ゲームやってるんだ」「なんか面白そうだね」と、その子どものやっていることに共感から入って、子どもを信じてあげる。

例えば、ゲーム系のYouTuberになるとか、ゲームのプログラミングとか、いろいろな生き方・暮らし方があるかもしれないけども、それはまた茨の道ということを子どもだってわかっている。

将来、社会で活躍するためにはいろいろなことを勉強する必要があることは、子どもが一番分かっていますから。


でも、今はゲームが楽しくてやっているだけのことだから、頭ごなしに子どもをしかりつけたり、「こうじゃなくちゃいけない」という価値観を押し付けたりするお母さんは、やっぱり子どもの可能性を摘んでしまう。


理想的なお母さんは、子どものことを信じて、ただ機会は与える。

例えば、いろいろな音楽や演劇を見に連れていってあげたり、興味があったら本物に繋いであげたり。でも「最終的に決めるのは子ども」と実行できるお母さんが、結果としては、子どもを伸ばしてる気がしますね。


自分で判断できることが大事

子どもがちゃんと勉強しないと心配だって焦る気持ちは分かります。

結局、脳の前頭葉は、自分で判断して自分で選択してないと発達しないので、お母さんが判断して、お母さんが選択していたら子どもの前頭葉はいつまでたっても発達しません。やっぱり子どもを信じてあげることがすごく大事です。

―前頭葉にはどのような機能があるんですか?


茂木さん:前頭葉は脳の司令塔ですね。何かに注意を向けたりとか、何かを選んだり、判断したり、そういう時に使われるのが前頭葉です。

現代社会に求められるのは、結局、前頭葉の機能の高い人なんですよ。

人工知能は正解が決まっていることには正解を出してしまうので、自らの人生を選ぶ、演出するというか、自分の人生の経営者になれるような人じゃないと、やっぱりこれからは輝かない。

だから、それを発達させるためには自ら判断して選ばないといけない。


例えば、テレビのクイズ選手権も、早押しクイズで出演者が回答している問題は尋常じゃないくらい高いレベルで、早く押そうとするために大量の練習をするんです。

世の中にある問題集だけでは足りなくなってしまうので、自分で問題を作らなくちゃいけなくなるんですよ。


だから、早押しクイズでトップレベルの人たちは、自分たちで問題を作ることがすごく重要な作業なのです。

クイズをたくさん知っているというより、自分たちで問題を作ろうとする方が、僕からすると評価できます。別に誰も教えてくれなくても、自分たちでやっていることだから。

それは一種の人生の経営判断。だから、自分で判断できることが、これからは間違いなく大事なことなんです。正解が分かることは別に人工知能でもいい。


平凡な子はいない。個性があれば、その子は活躍できる

脳にも個性や多様性があります。学力の高い子がいい子のように言われることもありますが、全くそんなことはないです。

「何かが得意な人は何かが苦手」というのが脳科学の一般原則です。ペーパーテストが得意な人は何か別のことが苦手だし、ペーパーテストは苦手だけど別のことが得意な人もいます。

例えば音楽家でも、超一流の人で譜面が読めない人なんてざらにいます。前に見た映画では、三大テノールのパヴァロッティも最期まで譜面を読めなかったことが描かれていました。

チャーリー・チャップリンは自分の映画の主題歌を全部作曲していましたが、譜面も読めないし書けません。


スタジオジブリのアニメ監督の高畑勲さんは、絵が一切描けない。アルプスの少女ハイジのキャラクターは、他の人が描いたものをブラッシュアップして作り上げていったそうです。

そう考えていくと、これからはチームワークの時代なので、どんな人でも活躍できる可能性がある。

分数ができなくても、漢字が書けなくてもいいじゃないですか。

それを補う個性があれば、その子は活躍できる。そういう意味で平凡な子はいないということです。


トム・クルーズさんやスティーブン・スピルバーグさんは、ディスレクシアという文字を読みにくい個性をお持ちです。でも、2人とも俳優、映画監督として大活躍していますよね。

日本もそういう形で個性を生かせる社会になった方が、やっぱりみんなもっと楽しいだろうし、社会全体としても生産性が上がると思うんですけどね。価値観がちょっと一元的過ぎますよね。


自分たちで新聞を作り、チームワークを実践

―どうすれば、日本はもっと個性を生かせる社会になると思いますか?


茂木さん:チームワークを子どもの頃から実践する。チームワークの練習には、新聞を使ってみるといいと思います。

僕はチョウの研究していたとき、自分で新聞を作っていました。珍しいチョウがいたときに「〇〇を発見!」という見出しをつけたりして。

みんなで新聞を作るとなると協力作業をしなくちゃいけないし、そういう形でチームワークを体験しつつ新聞という文化に親しんでいったらいいんじゃないかなと思います。

新聞社の見学もいいと思うんですよね。

子どものとき新聞社の見学に行って、輪転機(りんてんき)で新聞を刷っているところを見ると感動するだろうし、やっぱり現場を見るっていうのが大事だと思います。


また、どんな新聞記者も入社してすぐは大体サツ回りと言って、支局に配属されて、警察署に行って、夜討ち朝駆けで「ネタないですか?」みたいなところから始めるわけですが、

そういう現場の記者の苦労を伝えたら意外と子どもたちも面白がると思います。


ネットがネイティブになった時代、「新聞の文化を知っている人」が強みになっていくのかもしれない

子どもの頃から新聞広告が好きで、お年寄り向けのものも喜んで見ていました。

最近だと、池江璃花子さんが聖火のランタンを持った「+1(プラスワン)メッセージ」っていう広告や、樹木希林さんがジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」みたいに水に浮かんでいる、「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」っていう広告が印象に残っています。

新聞広告という文化もすごく大事だと思いますし、小学生の頃から慣れ親しんでいれば、世の中の仕組みもやっぱり分かってきますよね。

ネットも大事ですけど、ネットはみんなネイティブで知っているから、「新聞の文化を知っている人」が強みになっていくのかもしれないね。みんながちゃんと知らないことを知っているっていう意味で。


森羅万象の情報を載せているのが新聞

あと、ネットは偏っているんですよ。ネットだけ見ていると、自分が興味のある物しか見なくなる。エコー・チェンバー現象ってありますよね。


新聞は、1面から社会面まで、途中に経済面とか国際面、家庭面とか、それこそ連載小説なんかもあるし、世の中の森羅万象の出来事が全部載っていて、情報量が圧倒的に多いです。

新聞は一覧できるので、すごく情報収集の効率が良いです。

あと、チラシとか入っていて面白いですよね、地元のスーパーの安売りとか。


新聞をラテ欄から読んでいく

―新聞のおすすめの読み方はありますか?


茂木さん:1面から見ていく人が多いみたいですけど、僕はラテ欄から見て、社会面、地方面、スポーツ面、国際面、経済面と、1面に向かって読んでいきます。長年のやり方ですね。

―なぜ、そのような読み方をされているのですか?


茂木さん:まずいろいろバラエティーに富んだ社会面から始めて、真面目な1面の政治ネタとかを最後の方にする。オードブルからメインコースみたいな感じです。

地方に行ったときは、地方紙を読むのが好きです。

地方紙って、ネットでは拾えない情報が載っているんですよ。お祭り情報とか、お子さんの写真を載せるコーナーとかもあったりして、見ていて楽しいです。


親子でいろいろ話す時間を持つことが、子どもに対する最大の愛の表現

―最後に、小さい子どもを持つお母さんに伝えたいことはありますか?


茂木さん: 日本の伝統的な文化は、子どもを大事にするってことだと思うんですよ。子宝って言うくらいですし。もっと社会がみんなで子どもに投資して、心を掛けなくちゃいけないと思う。

教育ってすごく手間がかかることです。だからこそ大人たちがみんな子どもにもっと働きかけて、子どもに関心を持って、社会のことを子どもと話し合っていかなくちゃいけない。


僕が小学校低学年の頃は、大人たちが新聞をネタに社会のことや、日本の将来のこと、いろいろ話していたものですが、最近の大人はそういうことをしないんじゃないかなと思います。

芸能情報とかじゃなくて、もっと世の中で大事なこと、例えばコロナをどうするかとか、来年のオリンピックをどうするかとか、アメリカと中国の関係とか、そういうことを考えるきっかけになるのに新聞はとてもいい入り口だと思います。


新聞をとって親子でいろいろ話す時間を持つことが、子どもに対する最大の愛の表現だし、学びのきっかけになるという意識をもっと持ってほしいと思います。


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脳科学者 茂木健一郎さんに聞く「活躍できる子どもを育てる新聞の活用法」【前編】
https://www.shinbun.me/posts/9331526


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