13紙読み比べ“時事芸人”プチ鹿島さんに聞く「新聞の楽しみ方」【前編】

時事ネタを得意とする芸風で、テレビや新聞、雑誌等でレギュラー多数を持つ時事芸人のプチ鹿島さんに、新聞13紙の読み比べで得た新聞の楽しみ方、魅力などについてインタビューしました。


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朝は見出しだけでもいい

―現在どのような活動をされているのでしょうか?


プチ鹿島さん:僕は芸人ですが、一方で、時事ネタが大好きなので新聞13紙を購読して読み比べています。

昔から趣味で各紙読み比べていたんですが、ライブやラジオなどで紹介したらすごく反響がありました。「この新聞にはこう書いてあったよ」とか、それぞれの時事問題について思うことを話したり書いたりすることがメーンの仕事になっています。

―13紙の読み比べって大変そうですね。

プチ鹿島さん:午前中の2時間くらいは時間をとって読んでますね。

これが仕事にもなっているので特殊なケースです。一般の方は1紙か2紙の見出しや1面に何が書いてあるかとか、今日の社説のテーマは何かとか、そういうとこを見ていくだけでいいと思います。

朝は忙しいですが、15分あればどなたでもできるかなと思い、推奨しています。


読み比べが仕事になる前は30分で済ませていました。新聞は1面にどんなニュースが載っているかとか、どんな見出しがあるかとか、パッと見るだけで結構世の中の動きが分かるんですよ。

「朝はもう見出しだけでいい」という読み方を提唱してます。


大切にしているのは「野次馬精神」

―政治や時事問題を難しいと思う方も多いですが、どうすれば興味を持つことができますか?


プチ鹿島さん:政治も「人」がやってるものです。ある種の軍団対決だと10代の頃思ってました。父親が買ってくる週刊誌って政策よりは政局重視じゃないですか。

竹下派がどうだとか、分裂するとか、この政治家にはこんな豪快なエピソードがあってみたいな、そういうところから興味を持ったっていいんですよね。

10代のときはそうしたことしか興味がありませんでした。その延長線上で、この派閥は何を訴えているのかとか、他の派閥との違いは何かとか、自然に政策の中身にも興味を持つようになりました。


今だったら、例えば安倍さんでも、小泉進次郎さんでもいいですし、この人ってどういう人なんだろうと人物に興味を持つところから入るといいのではないでしょうか。芸能人に興味を持つのと同じ感覚でいいと思います。

僕があえて大切にしているのは野次馬精神です。


「この人こう言ってるけど、本当はどうなんだろう?」という週刊誌的な楽しみ方が先行していたんですよね。芸能人のゴシップを追いかけるのと同じ感覚でいると、しだいにその人のことが見えてくるし、人間関係だって見えてくる。


興味を持った人の記事を探す

―子どもの頃は遊びだったり、他にも気になることがいっぱいある気がするんですけど、どのようにして興味を持たれたのでしょうか?


プチ鹿島さん:僕はプロレスやプロ野球、テレビのお笑い番組とか見るのも大好きでした。気になる選手やタレントとか出てくるじゃないですか。そういう人の記事をスポーツ新聞とかで徹底的に探してました。その延長線上に政治家もいただけで、「人」に興味を持つことが重要だと思いますね。


―人に興味を持っていく過程で、家庭環境の影響はありますか?


プチ鹿島さん:家には新聞や雑誌、多くの本がありましたね。

雑誌も結構堅めの週刊誌と月刊誌がありました。でも、その中に芸能系やスポーツ系の柔らかい記事があるんですよ。そこから読んでました。


そのうち興味が湧くものがあったら、自分で本屋さんへ行って買ってました。堅そうに見えるものにも柔らかい視点があるし、柔らかそうに見えるものでも当然堅い視点があるということを10代の頃になんとなく思っていましたね。

だから、例えば田中角栄さんについて調べるのも、アントニオ猪木さんについて調べるのも、同じスタンスでした。

いろんなエピソードが出てくるんですよ。誰と仲が良さそう・悪そうとか、弟子にはこんな人がいてとか、誰々が次の挑戦者だとか、僕の中では同じスタンスだったんです。


僕は最初から新聞を熟読していたわけではないです。みなさんもネットで好きな芸能人や有名人を簡単に調べたりすると思うんですけど、僕の場合はその延長線上にたまたま政治家がいたんですよね。


得た情報は自分の中で熟成させる

―当時、発見したこと、面白かったことを誰かに話したりしていたのですか?


プチ鹿島さん:政治のことは話す相手がいなかったので、個人の楽しみとしてずっとやっていました。

例えば週刊誌の記事で「○○新聞はこんなことを書いていた」みたいに、新聞自体がネタになっていたりします。

新聞がよくネタにされているんだったら、その新聞を先に読もうって思ったんです。


―それを親に話したりしましたか?


プチ鹿島さん:親には話さなかったですね。今はSNSがあるから誰でも情報をすぐに発信できるじゃないですか。でも、僕は得た情報を自分の胸の中で熟成させる期間がすごく重要だと思うんですね。


例えば今、コロナウイルスのことでいろんな説が飛び交っています。SNSでそういう説を見つけたら、すぐに人に言いそうになったり、リツイートしそうになったりしがちです。デマかもしれないのに。

今は誰もが発信できる時代だからこそ、確証を得てないものは自分の中で寝かせておいて、確証を得てから初めて人に発信する、ということに気をつけてますね。


そこで1つの目安というかフィルターになるのが新聞なんですよ。新聞で報じられたら「やっぱりこれは重要だったんだな」と信じます。

例えば、ネットでガンガン言われていても、新聞が報じていなければ僕はまだ自分の胸の中だけで楽しんでいる状態です。

その後、新聞の記事に取り上げられたら「これはどうやら人前で言っていいネタだぞ」と自分が情報発信する際のフィルターにしてますね。


ニュース時事能力検定に合格

―そうした新聞の読み方が勉強などに生きた経験はありますか?


プチ鹿島さん:最近のことですが、ニュース時事能力検定を受けました。

試験に向けて勉強する際、気になるワードを過去の新聞記事で追っていったら、自分の頭の中に入りやすくなったんですよね。

よく社説を読んだらいいと言われますが、しっくりこない方もいると思います。


僕は10年くらい前から社説を擬人化して、小難しいことを毎日偉そうに言っているおじさんだと思うようにしたんですよ。

そのおじさんに突っ込みながら読むようにしたら、急に社説が好きになったんですね。


ただ新聞を真面目に読むだけだと、疲れるししんどくなると思うんですよね。だから、自分の中で楽しむ切り口を見つけるのは大切だと思います。

「おじさんがまた今日もなんか偉そうにしゃべってる」みたいなスタンスで社説を読み始めると、新聞によってもキャラクターが違うのが分かったり、「Aおじさん、Bおじさん明日はそれぞれ何をテーマにしゃべるのかな」と楽しみになったりします。そうすると、タイトルだけ見るのも面白くなります。「今日の締めの言葉は何かな」という視点で読むのも面白いと思います。


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13紙読み比べ“時事芸人”プチ鹿島さんに聞く「新聞の楽しみ方」【後編】
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【動画】時事芸人プチ鹿島さんに学ぶ 「なるほど!新聞活用のコツ」
https://www.shinbun.me/posts/8523570