『うんこドリル』著者&編集者に聞く!子どもの学習意欲を高める「学びの本質」とは?【前編】

『うんこドリル』著者の古屋雄作さん、文響社うんこ編集部の相原健吾さん、うんこ事業部うんこアンバサダーの石川文枝さんに、大人気の『うんこドリル』が生まれたきっかけから、うんこドリルに詰まったこれからの時代に必要な教育のヒントについてインタビュー取材しました。


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『うんこドリル』が誕生するまで

ーうんこドリルのきっかけになったのが「うんこ川柳」とお聞きしたいのですが。


古屋さん:はい、「うんこ川柳」というのは僕が勝手に考えたもので、「うんこを ぶりぶり もらします」「うんこを パチパチ 鳴らします」「うんこを ガリガリ 削ります」など、全てこの4・4・5のリズムで「うんこ」をひたすら詠みまくるというものです。厳密には川柳でもない単なる言葉遊び。この「うんこ川柳」を大量に作っていた時期があるんですよ。たしか2001年から2004年ごろの間だったと思います。

個人的にこれがめちゃくちゃ面白くて。なんでこんなにいっぱいできるんだろう、どうして「うんこ」って何回繰り返しても飽きないんだろう、と。

よくインタビューで「なぜうんこに目をつけたんですか?」と聞かれますが、「特に理由はないです」というのが答えなんですよね。「子ども心の象徴だから」とか「うんこは笑いの原点」とか色々と理由はつけてみるんですが、それは後から分析しただけで、当時はシンプルに「面白いから」やっていたのです。

ただ、この「うんこをひたすら繰り返す」という面白さは何か形になるなと。ぼくは映像を作ったり本を書いたり色々とやっていますが、「これは本になる」と思い出版社への持ち込みを始めました。


「やっぱり子どもに受けるな。子ども向けにやりたいなと思いました」

2007年に『R65』というDVD作品を作りました。その中に『うんこ川柳創始者 武蔵寛』というフェイクドキュメンタリー作品を収録しています。四国に住む元国語教師のお爺さんがこのうんこ川柳の創始者であり、小さな私塾をひらいて地元の子どもたちに半分無理やりうんこ川柳を教えている、という内容です(笑)。

「うんこ川柳」創始者 武蔵寛(78)
https://youtu.be/Q-aOkb8baj8


この撮影の時にエキストラで小学生を集めたのですが、うんこ川柳の説明をすると、カメラが回っていないのに、みんなでうんこ川柳をずっと言い合って遊んでいたんですよね。「うんこを ぐつぐつ 煮込みます」とか(笑)。やっぱりこれは子どもに受けるな、子ども向けにやりたいなと思いました。

当時、『声に出して読みたい日本語』(齋藤孝 著)など日本語ブームみたいなものもあったので、日本語のオノマトペの奥深さみたいなところにこじつけて、子どもの教育の本にするという案もあったりして。「うんこ川柳塾」という企画を立てて、出版社やテレビ局など多方面にうんこ川柳を売り込んでいた時期がありました。でもその時、形にならなかったのでしばらく忘れていたんです。


2015年ごろ、文響社の社長で、昔からの友人である山本くんが「そういえば、うんこ川柳ってあったよね」と言ってきて。仕事プライベート関係なく色々な人にうんこ川柳の話はしていたのですが、その中に山本くんもいた。彼も「うんこ川柳、面白かったな」と昔から引っかかってくれていたみたいなんです。

僕からすると10年越しくらいで「いよいよ来たか」と盛り上がりました。それでどうやって本にするかという話の中で、より多くの人に広げられるフォーマットや、うんこ川柳の面白さをどう使えばいいかというアイデアの1つで「漢字ドリル」に行き着いた感じです 。


ー文響社さんは教育系の本を出版されたことはあったんですか?


石川さん:それまで学習参考書としての出版は行っておらず、うんこドリルが初めての出版となりました。

弊社はエンターテイメントに実用性をかけあわせた作品を作ることを大事にしていて、その本を読むと明日に活きる知識や教養が身についたり、前向きにアクションしたくなる心持ちになったりする、そのきっかけとなる作品を作っていこうというのが弊社のサービスを作る際に大切にしているコンセプトです。

うんこドリルももちろん、それに沿ったものですね。


エンターテイメントと学びの関連性とは?

ー初めての子ども向けの本気の教材ということで、どのようにして創り上げていったんですか?


古屋さん:最初は、今考えると、かなりナメていました(笑)。それこそ国語辞典と僕だけみたいな形で、僕が全部熟語を選んでいたし、分からないことがあったらGoogleで調べるというレベルで(笑)。でも途中からこれじゃダメだよねということで学習参考書を制作している専門のスタッフ、編集プロダクションなどに協力してもらうようになり、2年くらいかけて作っていきました。

ーこうすると子どもって覚えやすいんだなって気づきがあったりしましたか?


相原さん:意味が近い言葉などを、グルーピングして並べるなどしています。五十音順とか画数順とか、そういう順番でもできるんですけど、やっぱり頭に入ってきやすいように、関連して覚えていけるようにとか。


ーうんこを使って親しみや興味をもってもらう工夫がなされているのだと思うのですが、例えば子どもに新聞を読む習慣をつけてほしい、勉強アレルギーがある、なんていう問題はどんな工夫をすると解消できると思いますか?


相原さん:こうすると解消されますという絶対的な答えはないと思うんですよね。子どもによってうんこを面白いと思う・思わないとかもあると思いますし。

やはり、最初の入り口のハードルを下げるというか、特に勉強が好きでないと自分で感じている子どもには、何かしらで興味を持たせてあげたいと思ってます。

保護者の方も実際にドリルを見てみると、ただうんこが出てくるだけじゃなくて世界観が面白いとか、子どもがつい言葉に出して読みたくなるとか、言っていただけます。

これがもし「〇〇のうんこ」みたいな単純な言葉だけだったら、そうはならなかったと思います。また、ドリルとしては問題の数をもっと増やすこともできるんですけど、それよりも、きっかけになるところ、算数でも英語でも、「これ面白い」って思ってもらって、まずそこにトライしてみてもらえることを大切にしました。


1ページ目に取り組んでもらうのも重要なんですけど、最後まで続けてもらうのって、なかなかこうすればいいって正解はないので、いろんなドリルでいろんなことを模索しながらやってます。

学年や年齢、小学生・幼児とかで違いがあるので本当に模索中ですけど、古屋さんやメンバーで相談しながら、形にしていくっていうのを続けてるところです。


笑いながらやってたら学びになってた、みたいな世界を作りたい

ー教育改革で学習指導要領も変わってくる中で、子どもたちに対してどんな教育のアプローチを考えてますか?


石川さん:最近の子どもってすごく忙しいんです。学校の授業を終えてもその後に塾や習い事が詰まっていて、そもそも家で落ち着ける時間があまりないんです。そんな中、学習指導要領も新しくなり、勉強する教科や、生きる力を身につけるための判断力・表現力などもさらに追加されます。


なので、できるだけ子どもが負担に思う時間を減らしてあげたい。そういった意味で、うんこで楽しみながら勉強ができるということには可能性を感じていて、笑いながらやってたら学びになってた、みたいな世界を作れるんじゃないかと思っています。

そうすることで義務的にやっていた勉強が、自然と笑いながらできていた、遊ぶためにやっていたことがいつのまにか勉強になっていた、みたいな、笑いと学びの境界線を溶かしていくようなことを、事業部としてはやりたいなと思ってます。


図工の気分で新聞に触れさせてみる


—「笑いと学びの境界線を溶かしていく」というところで、もしご家庭で新聞を活用するとしたら、親子でどんな工夫や楽しみ方ができると思われますか?


石川さん:新聞を読むということに関しても、「読まなきゃいけない」「そこから学ばなきゃいけない」という義務感になってしまったら、続かなくなってしまうと思います。なので、まずは好きなところだけ、楽しいところだけを読むようにするだけでも、新聞を自然に楽しむことができるようになるのではないでしょうか。

新聞を読むとなるとどうしても記事全体を理解しなければいけないと思ってしまいがちなのですが、まずその意識をとっぱらってあげることが大切なのかなと思っています。


なんとなく気になった文面やタイトルにマーカーを引いてみたり、目を引く写真や新聞広告を切り抜いてみたり、まるで図工のような気分で新聞に触れさせてみる。その上で例えば、切り抜きをまとめた「自分だけの面白いノート」を作ってみても面白いかもしれませんね。

親目線でも、子どもが今どんなものに興味があるかということを知ることができるので、そこからコミュニケーションができて、という良いサイクルになるのではと思っています。

相原さん:最近、「うんこドリル 英単語版」を発売しました。
これもやること自体は、単語の意味を覚えるとか、書く練習をするという単純なことなんですけど、いかに定着を図るかというところで、イラストや文章もうんこに絡めて楽しめるようにしています。


ー絵付きのドリルってあるかもしれないですけど、うんこがいることで脳に焼き付いてくる度合いがだいぶ違いますよね。


相原さん:単にうんこのイラストがあって、1個ずつ覚えようとしても、入ってきづらいところを、漢字ドリルのグルーピングみたいに、英単語自体もグルーピングされて、それ自体が一つの物語になっていたり、しかも、話が続くみたいなものもあったりして、後でまた出てくる構成にしているなど、いろいろしかけをしています。


ー面白いですね!「次どうなるんだろう」って言う好奇心を途中で損なってしまわないような工夫がたくさんされてるんですね。計算ドリルもシールを獲得して育てたいって気持ちが働いてくるとか。


古屋さん:自分は集中力がなかったからそういう気持ちが分かるのかもしれないですね。子どもの気持ちが(笑)。うんこドリルをせっかく選んでくれたからには「面白かった」って思ってもらいたいです。