外科医でマンガ家のママ さーたりさんの子育て術は「料理よりも読み聞かせ優先」

外科医として、そして3人のお子さんのママとしての日常を描いたコミックエッセー『腐女医の医者道!』(KADOKAWA)が大人気のマンガ家さーたりさんに、子育てや教育についてお話を伺いました。


「さーたりさんに足りないものは物理的な時間です!」と担当編集者から言われるほど多忙な日々を送るさーたりさんですが、子育てや教育で時間がないママだからこその「ぬきどころ」や「こだわりどころ」があるのでしょうか。そして、ご自身の10年後や生き方についても語ってくださいました。

朝3時起きでマンガを描いて、お弁当づくり


― いろんな「顔」がありますが、1週間のスケジュールについて、教えてください。


さーたりさん:医師としては週に2日、大学病院で9時〜17時まで勤務しています。そのほかに、2、3日クリニックで診療しますが、勤務時間は日によって違います。マンガは、子どもの寝かしつけ後か、早朝に描いていますね。


― 3人のお子さんとの時間は?


さーたりさん:長女は小学校3年生の8歳で、次女は幼稚園に通う4歳です。長男のは、2歳で保育園。21時頃に寝かしつけるんですが、起きられず・・・(涙)。朝3時に起きてマンガを描くなど、自分の時間をつくっています。


6時頃に次女のお弁当をつくり、7時に長女を送り出し、そのあとで下の子2人を幼稚園と保育園にそれぞれ連れて行きます。平日は夫がお風呂の時間までに帰宅してくれますが、基本的にはワンオペ育児ですね。私が大学病院に勤務する日は、夫が送り迎えをしてくれます。


だから、自分の時間は、スーパーへ買い物に行くときくらいですね(笑)。



料理はしない、洗濯物をたたまないで、子どもと遊ぶ!


― 大変ですね。家事や子育ての「ぬきどころ」って、ありますか?


さーたりさん:料理には、極力時間を使わないようにしています。あと、洗濯物はたたまない(笑)。家が商店街に近いので、「お惣菜でいいじゃん!」って。


それに、3食ぜんぶバランスのいい食事じゃなくてもちゃんと育つだろうと思ってます。お弁当や給食はちゃんと食べているから、1食ちゃんとバランスよく食べてきているなら朝食や夕飯は、気を使わなくてもいいかなって。


料理に時間をかけるんだったら、子どもと遊んだり、自分の時間に当てたりしたいんです。料理中に「この本を読んで」って言われたら、料理は中断して読むようにしています。そのおかげかどうかは分かりませんが、長女は活字大好きで、次女も長男も本を読むのが好きですね。


―「こだわり」はありますか?


さーたりさん:本を読んでって言われたときにすぐに読んであげるとか、子どものリクエストになるべく答えたいと思っています。ただ、次女は、放っておくとプリキュアの映画のパンフレットしか持ってこないんで、「ちょっとプリキュア禁止!」って注意します(笑)


読み聞かせは、長女ののときからやっていますが、読む親のほうからすると、物語を読みたいです。図鑑とか読まされるとけっこう大変(笑)



長女は教科書を1日で読破! お菓子の原材料名も読む


― 読み聞かせ以外に、お子さんが本を読む習慣ってどうやってつくりましたか?


さーたりさん:「本が家にある環境がいい」と聞くので、家に本を置いておくようにしています。あとは義母が、長女の生まれたあとに本を月に1回送ってくれるサービスを頼んでくれました。あとは、本棚から子どもが自分で本を取れる環境にするように気をつけています。


長女は小さい頃から読み聞かせが好きで、下の子もいなかったのでリクエストされるがままにたくさん読んでいたら、暗唱できるくらい物語を覚えました。自分で文字が読めるようになったた6歳ころに、「親の都合とは関係なく読めるんだ!」と気がついて以来、ずっと読んでますね。教育ママっぽく教えたりとか、「読みなさい」って強制したりしたことはないです。


― コミックエッセーのなかでも、長女の「本の虫」っぷりエピソードがありましたね。


さーたりさん:そうなんです。長女は、放っておくと本ばかり読むんで、周りの声も聞こえないんです。着替えながらも、食べながらも読んでいるので、注意すると、今度はお菓子のパッケージの原材料名を読んでいるんですよね。


教科書も、もらったその日にぜんぶ読んで覚えちゃう。学校でも休み時間に本ばっかり読んでいて、周りから「あの子は本が大好きな子」と認識されているみたいです。本が大好きで、活字大好きなんですよね。


一時期は、落語を読んでました。児童文学のような物語や伝記、図鑑も好き。今は源氏物語や枕草子といった古典文学に興味があるみたいです。このあいだ、「今、時間あるから藤原氏の家系図を書いてもいい?」って聞かれて、「いいけど、家系図って趣味で書くことじゃなくない?」ってやりとりをしました。物語を覚えていると、そうしたことも自然と頭に入るので、歴史は覚えやすいんですよね。



実体験とリンクさせると読書の習慣がつきやすい


― すごい探究心ですね。


さーたりさん:なるべく、「こういう本を読みたい」と言われたときは図書館に付き合ってますね。家族で出かけるときに「図鑑で調べようか」って声をかけるとか。たとえば、動物園に行ったときは、帰ってきてから動物の図鑑や絵本を読んで子どもと「これ見たね」と会話したり、山に行くときは、植物図鑑を持って行ったりして、なるべく実体験とリンクさせるようにしています。



新聞はタイムリーな話題を詳しく読めるから子どもも夢中に


― 長女は新聞を読みますか?


さーたりさん:なんでも読むタイプなので、「新聞も読むかな?」と思って、子ども新聞を購読してみました。ほとんど読んでいましたが、受験の算数のコーナーとか、スポーツ選手の名前とか、興味のない分野は読めなかったみたいです。まだ小学校3年生なので。


平成から令和になるときの特集記事は、すごく興味をもって読んでいました。テレビや学校でも話題になっていたので、「天皇ってなんなの? 天皇って誰?」ってよく質問されました。子ども新聞にすごくていねいに解説が載っていて、熟読していました。


ちょうど知りたいことが載っていたので、おもしろかったみたいですね。新聞は、時事をていねいに取り上げるので理解が深まりますよね。たとえば、今回の天皇制とか、元号が変わるきっかけなどは、今起きている旬なテーマなので、そうしたことをまとめた本はまだ少ないです。


でも、テレビだけでは映像ということもあってか深くは理解できないし、大まかな流れを理解しずらい。子ども新聞は「年号ってなに?」とか詳しくていねいに、文章と図・イラストなどで説明してくれていたので、分かりやすかったですね。


―今回のマンガにも描いていらっしゃいましたね


さーたりさん:わたしにとって新聞の思い出は、夏休みのおばあちゃんの家で、扇風機で新聞がバサバサーってなって、読みにくいなと思いながら、端から端まで読んだ光景です。


祖母の家は、読むものが新聞しかなかったので、株価のページ以外はぜんぶ読んでいました。新聞は時間がたった事件などの論評があったりしておもしろいですよね。



親子で新聞を使って時事ネタクイズ大会!


― 新聞はどんな風に読んでいますか?


さーたりさん:そうですね、新聞をじっくり読んでいると、いい意味で自分のいらない情報が取れますよね。「こういうことを言っている小説家がいるのか」とか。あと、野球が好きなので、高校野球を見て次の日に新聞を読むと「○○選手、怪我ののちに復帰!」とか、「監督はこういうことを考えてたのか」「そんなドラマがあの試合には隠れていたんだ!」とか、自分の持っている知識に枝葉がついていく感じがおもしろいですね。


― 親子で読もうって思いますか?


さーたりさん:そうですね。たとえば、子どもから質問されて、わたしが答える以上の知識が新聞に書いてあるので、子どもが記事を持ってきて「ここに載っていたよ」って。あとは、親が知らなかったことも、子どもが新聞で知識を得てクイズを出してくれますね。


親に話すことで記憶の定着になるし、親が質問すると子どもが調べるんですよね。わたしが教えたわけじゃないんですけど、長女の性格にあっていたのかもしれませんね。


― 多忙な毎日のなかで、アウトプットが多い職業ですが、インプット(情報収集)はどうしていますか?


さーたりさん:職場で新聞を読んだり、家ではネットニュースやTwitterも使います。夫が池上彰さんを大好きなんです。池上さんの番組はぜんぶ録画して、新刊もぜんぶ買ってくるので、いっしょに読んでます。池上さんの本を読むと、世界情勢が分かります。あとは朝、ラジオを聞くのと、仕事や人生に悩むとその答えを探しに本屋に行きますね。



中途半端な自分を埋めようとする力が、原動力


― さーたりさんは、自分のやりたいことを叶えているように見えます。


さーたりさん:いえ、「常にまだ迷い中」です。昔から「自分は欠けている、中途半端だな」って思いがあります。でも、その欠けたところを埋めようとする力が原動力になっているから中途半端でもしょうがないかな、と。


悩んだり迷ったりするのは当たり前。「早くラクになりたい」というのは、いいことかもしれないけれど、ただの開き直りだったり問題を手放しちゃったりすることかなと思います。


それに、自分が持っているものをすべてつぎ込んだからといって、完ぺきになるわけじゃないし・・・と思うようになったら、気がラクになりました。それは、いろんな人と話したり、新聞や本、ブログを読んだりしてみんなそういうところを抱えているんだなと気づいたんです。


― 育児や出産は、どうしても年齢との葛藤があります。


さーたりさん:この1か月とか1年後って考えると、つらくなっちゃうので、10年後の自分をイメージするようにしています。それで、今、無理してもやるべきなのか? ペースダウンするべきなのか? 


子どもって、こんなかわいくても10歳になると親の手を離れて遊びに行っちゃうし。20年も30年もしたらおっさんくさくなっちゃうし(笑)。そうなってから始めるより、少しでも今やるべきことかな、と思うとちょっとだけ元気になります。仕事もやりたいし、生活に合わせて少しずつやっていこう、と決めた。という感じですね。


わたしは、2人目が生まれてから4年くらい外科から離れて、後悔しているんです。だから、後悔する予感があることは、やりたくないっていう気持ちが大きくなっています。この先、もしマンガがすごく売れても、医者の仕事はやめたくないので、それが答えかなと。


― 外科医のおもしろさって、なんでしょう?


さーたりさん:外科医は、患者さんがいて、病気の診断をつけて、どういう手術をしたらいいかを考える。実際の手術で病気を目で見て触って、治療して、患者さんが元気になっていく。そして、顕微鏡の検査に出して結果を見て「この病気はこのような経過をとってCTなどではこう見えるのか」と自分の経験として次の患者さんにフィードバックする流れが、外科の仕事の好きなところですね。


自分の目で見て取り除くことができるのは、外科の醍醐味だと思うんです。自分はもっと全部の流れに関わっていきたい。どれだけフィードバックできるかが、医者の経験の差だったりするので、そのために知識が必要だから勉強してアップデートしていくんです。




やりたいことをすべて叶えているように見えるさーたりさんですが、ご自身のキャリアと子育ての両立で悩んで、迷って・・・を繰り返していることに驚きました。年齢というタイムリミットに対し、その都度、軌道修正しながら、ベストな選択をする。母としてだけでなく、一人の医師として、マンガ家としての人生を葛藤し進んでいく姿に、コミックエッセーを通して読者は共感しているんだな、と感じられる取材でした。