子どもの能力を伸ばす重要ポジションは親!理数系最強講師YouTuber・ヨビノリたくみ式、アクティブラーニング

「人生100年時代」の今、大人は学び直しの場を求めて大学へ再入学したり、オンラインコミュニティへ参加したり、いろんな方法で勉強をしています。


「勉強」という意味が、「知識をつめこむ」ことから「学び、生かすもの」へ変わりつつあります。それは、子どもの世界でも同じです。まさにそれは、2020年度からの「教育大改革」に現れています。


2000人の生徒を教えた予備校講師であり“数学の魔術師”であるYouTuberのヨビノリたくみさんに、次世代を担う子どもたちが前のめりで夢中になれる勉強法について聞きました。


前編では「読解力」を新聞や活字で身につける方法、中編では新聞をはじめとするメディアを活用した「情報収集力」について学びました。後編では、「学習指導要領」の改訂で求められる「思考力」「表現力」など、アクティブラーニングをはじめとする「主体的な学習力」について教えてもらいました。




1)まずは動画から入って、図鑑や本を読んで活字に触れさせる

前編では、新センター試験対策に「読解力」が必要だという話を伺いました。もう一つの「教育大改革」である、授業内容がどう変わるのかについても教えてください。


10年ぶりに「学習指導要領」が変わります。ITの技術革新とグローバル化を前提に、思考力や判断力、表現力を養う教育に大きく舵を切るのが目的です。なかでも、それを推進するために自分から率先して学ぶ学習方法「アクティブラーニング」を授業に導入することが注目されています。


幼少期や学生時代のたくみさんは、お話を聞く限り、「自分で調べる」「友だちに教える」「人に伝える」ことをして過ごしています(前編参照)。まさに、「教育大改革」で目指す人材像のモデルのようです。


一方で、その手前で「なにを発信したらいいのかわからない」とか「好きなことがわからない」とつまずく人もいます。


たくみさん:自分が何に興味があるのかわからない、ということですかね。それは、YouTubeとか動画を見るといいと思いますね。


でも、ただYouTubeを見ているだけだと、エンタメとか自分が関心のある動画しか出てこないと思うんです。コツがあるとしたら、わざと日常生活で使わない難しい言葉を使って検索してみること。


YouTubeには無数の動画(情報)があるので、ふだん検索しないワードで動画を探すと、今まで関心を持ったことがない動画と出会えて、「ああ、自分はこういうものが好きだったのか!」と気づくきっかけになりますよ。


外で目に入ったおもしろいこととか、気になったことを動画で検索して調べてみる、っていうのは、興味の持てるものの探し方としては、新しいかなと思います。


― 例えば、なんでしょう?


たくみさん:例えば‥‥そうですね、なんでもいいですけど、外で見たテントウムシがキレイだな、と思ったとします。「YouTube テントウムシ」で調べたら、「世界のキレイなテントウムシ10選」といった動画が、いっぱい出てきます。


こうして、テントウムシに興味を持ったら、「テントウムシ、もっと知りたい!」と思って、図書館で図鑑を見ます。これは、自然に思うと思うんです。ここで、活字に自然に触れることになる。


最初から「これが図鑑です」って渡されるよりも、興味ベースでやったほうがいい。活字のいいところは、興味のあること以外も同じページ内や本のなかに書かれているので、自然に興味が広がっていくところですね。



2)子どもの知識欲は、お母さんの「それは、なに?」で刺激する

― 親は、どういう風に情報をアップデートしていけばいいでしょう?


たくみさん:親も子どもが興味を持っているものと同じものを見る、そして、「聞く」っていうのがいいと思います。


例えば、子どもがテントウムシに興味を持ち、将来は生物に興味を持つかもしれないんですけども、親がその知識に勝とうとせず、子どもが調べたテントウムシについて聞くんです。


「それは、なんて名前なの?」「背中の模様はなんであるの?」って。


子どもが「答えられる」「答えられない」っていうのもいい経験だし、「お母さんが聞いてくれる」っていうことが、すごく子どもにとってうれしいことだと思うんです。教えられるばかりだったのに、教える側になれるってことが、うれしいんです。


お母さんやお父さんが、子どもにたくさん聞くと、子どもも「動画だけじゃ足りないな」と思って、もっと勉強しなきゃって自然に興味が促進されていくんじゃないかなと思います。


― たくみさんも、経験がありますか?


たくみさん:そうですね。親から聞いているのは、「これ、なに?」ってよく質問していたのに、小学校高学年になると「ねえ、これ見て」「ねえ、見て」が口癖だったそうです。


自分から「学んだことを話したい」という感じで親に話していたので、「親から子どもに聞いてあげる」というのが、いいと思います。


親って、唯一子どもの一番近くで子どもが興味のあるものを知ることができる存在です。親だって、子どもの興味があるものに自然と興味がわきますよね。もし、子どもが好きなことを伸ばしたいなら、いっしょにやること。親は、子どもの能力を引き出すのに重要なポジションなんじゃないかな。



3)小さな成功体験があれば、学びは必ず習慣化できる!

― 「学んだことを話す」という点で少しコツを教えていただきたいです。


たくみさん:自分の場合は、ITやビジネスの話をふられることが多いです。とくに、YouTuberは、新しい職業として世間から認められつつありますし。


フリーランスの講師としての生き方を聞かれた時に、ビジネスとして語れたほうがいい。だから、日ごろからビジネスに関する新聞記事を読んで、自分の考えをうまく語れるように心がけてます。


IT分野は、常に最新の情報に触れておきたいという目的もあります。ネット上は、最先端でやっていかないと取り残される世界だと思っているので、いつも新しいニュースに触れています。


― たくみさんは、情報のストックはされていますか?


たくみさん:はい! かなり“メモ魔”なんです。なんでも入ってます。街中でメモしたくなったら、iCloudにスマホでメモして、1か月に1回くらいそのメモをまとめたりしてます。その時に気がついたことをまとめられるので、かなりメモが好きですね。

※画像:たくみさんのメモ


― マイルールはありますか? 


たくみさん:決まったルールは設けてないです。大人になってからよく思うことが、「絶対これは、一生忘れないわ」と思って感動したこともすぐに忘れるので(笑)。「もう、これはメモしなきゃダメだな」と。ルールは気にしないでとにかくメモる!


子どもの頃から、マンガを読んで名言をメモして名言集を自分で作って友だちに見せてました。今でも、自分の好きなフレーズをメモるんですね。メモだけでなく、Twitterで好きだなと思うフレーズをスクリーンショットして。仕事のメモとかも全部バーっとメモしています。


―継続する力がすごい! たくみさんは、何か習慣化する工夫はしていますか?


たくみさん:前編でもお話ししましたが、なにかを発信する場所があると、情報をストックしていくことを習慣化しやすいと思います。例えば、発信する場所がない、という状況で、自分もこれまで通りに本を読んだり、活字に触れたりできるかと言われると、おそらくできないです。


子どもの頃のモチベーションは、「友だちに話したい!」だったし、今だったら、トークイベントや動画のライブ配信で発信することが、モチベーション。小さな成功体験じゃないですけど、「ストックしておいてよかったな」と思えることが、短い期間で起きなければ人はなかなか習慣化できないし、変えられないと思います。



4)YouTubeで好きな先生を見つけると、勉強にもハマれる!

―子どもが勉強を習慣化できず困っている親御さんもいらっしゃいます


たくみさん:「親は勉強させたいけど、子どもが勉強してくれない」というケースがおそらく一番多いと思います。自分も親戚から相談されます(笑)。それを一番救ってくれるのは、YouTubeだと思っています。


自分の配信する動画は、大学生や高校生向けなのでリーチできないのですが、勉強系YouTuberと呼ばれる人たちが、小学生向け、中学生向け、と講義を配信しています。


人気のYouTuberって、単に「カッコいい」「キレイ」「おもしろい」という、小中高生が好きな要素があるんです。


過去を振り返っても、おもしろい先生が教えている科目を好きになっていたな、と。よくあるのが「数学なんで嫌いになったの?」と学生に聞くと、「学校の数学の先生が嫌いだったから」。


人が嫌いだと、ぜんぶ嫌いになってしまう。これまでは、先生を選ぶ権利がなかったからそこで諦めるしかなかった。


でも、今は違う。誰にでも先生を選ぶ権利がある。YouTubeにいるようなおもしろい人が教えてくれて、好きになるきっかけを与えてくれる。なにかきっかけがあれば、子どもって無数に動画を見るようになるんです。


学校の宿題とか無機質なものだけにハマらせるのは、大人でも無理です。プラスαで楽しいと思える要素があれば、勉強もハマれると思います。


― 勉強の楽しさを広めるのが、たくみさんの使命でもありますね。


たくみさん:はい。YouTubeが続く限りは、「ヨビノリ」のチャンネルを大きくしていきたいです。今の目標は、「理系大学生が全員知っているチャンネルにすること」。


YouTubeに依存する形でなく、もっと広い範囲での抱負であれば、その時々で、自分に一番合った環境で楽しく働き続けることが目標です。




人気YouTuberたくみさんのお話を聞いていると、「学ぶことは、とても楽しいことなんだ」ということが伝わってきました。本や新聞といった活字を読むことも、学校の勉強も、大人になってからの情報収集も、すべて自然に、たくみさんの生活のなかに溶け込んでいます。


「店番で計算を覚え、算数が好きになって、新聞を読んで活字好きになった」というたくみさんは「幼少期の経験は、大事ですね」と言っていました。子どもたちにとって、これからの時代を世界基準で生き抜くのに必要なのは、自然体で学べる環境と学ぶ姿勢なんだということを感じたインタビューでした。


<ヨビノリたくみ Profile>

東京大学大学院卒業。学生時代は理論物理学を専攻しており、学部では「物理化学」を、 大学院では「生物物理」を研究。博士課程進学とともに6年続けた予備校講師をやめ、科学のアウトリーチ活動の一環としてYouTubeチャンネル「ヨビノリ」を創設。チャンネル登録者数は14万を超える。特技は将棋。AbemaTV「ドラゴン堀江」の講師としても活躍した。

ヨビノリたくみ Youtubeチャンネル


インタビュー中編はこちら

https://www.shinbun.me/posts/6189146?categoryIds=1762367

インタビュー前編はこちら

https://www.shinbun.me/posts/6111933?categoryIds=1762367