十四万人が支持する“数学の魔術師”が教える これからの大学入試に必要なこと

1990年から始まった「センター試験」も残すところ、あと1回。2020年度(2021年1月)からは、「大学入学共通テスト」が導入されます。30年もの歴史のなかで、センター試験を舞台にしたテレビ番組やマンガなど、数多くのドラマが生まれました。


なかでも、今年のセンター試験で注目を集めたのは、ネット番組『ドラゴン堀江』(AbemaTV)です。東大卒の起業家・堀江貴文さんが、自身の東大合格メソッドを使い、半年間でタレント3名と共に東大合格を目指し猛勉強する企画でした。


同番組で理数系講師として活躍し、「数学の魔術師」の異名を持つ、勉強系YouTuberで東大大学院卒のヨビノリたくみさんに、「2020年教育改革」のポイントなどについて、お話を聞きました。「ネットで勉強」ノウハウを前編・中編・後編でお届けします!


1)塾に行かず将棋道場へ。勉強とは無縁の小・中学生時代

― 『ドラゴン堀江』おつかれさまでした。とてもわかりやすい数学の講義動画は、ネットでも話題を集めていました。昔から勉強が得意だったのかなと思うのですが、勉強に目覚めたのはいつ頃でしょうか?


たくみさん:めちゃくちゃ遅いですよ。高校1年生までは勉強に興味がなかったんです。両親も勉強は放任だったので、塾にも通ってません。その代わり、小学校、中学校は将棋にハマってほとんどの時間を費やしていました。道場へ通って、プロ棋士から教わって。


中学2年生からは部活に熱中していたし、なかなか勉強にたどり着かなかったですね。高校も進学校ではないし、選んだ理由も「家から近くて、キレイ」だから(笑)。それに、前期試験で部活の得点が加算されて、筆記試験なしで入学しました。勉強をするきっかけが全然なかったんですね。



2)高校の学力テストで、いきなり全校1位! 勉強キャラへ一変

― 集中力の高さは、昔から発揮されていますね。


たくみさん:勉強にハマるようになったのは、高校から。入学後、最初に受けたテストの成績が、全校生徒のなかで1番だったんです。そこで初めて「自分は勉強が得意なのかもしれない」と気がついたんです。


自分でも勉強が好きになっていったけど、やっぱり一回いい成績を取ると、「勉強できるキャラ」として周りから扱われて、「勉強できるキャラだから友だちに教える」という環境になって、「勉強に目覚めた」という感じです。


― 勉強をしなくてもテストで1番! うらやましいです。


たくみさん:勉強はしていなかったけど、何も考えずに高校まで過ごしていたわけじゃない、というのが大きいと思います。幼少期から活字や本が大好きで、図書館に通っていました。子どもの頃は、“探偵大好きっ子”だったので、ミステリー小説はたくさん読んでいたし、クイズやなぞなぞ、将棋といった「考えること」が大好きだったんですね。


「頭を使うことはたくさんしていて、勉強のような知識を入れる、ということをやっていなかった」だけだから、テスト前に初めて知識を入れる体験をして、それまでに養われた考える力と結びついてうまくいったのかなと思ってます。



3)「そこに文字があるから読む」。銭湯の店番で新聞を読む子ども時代


たくみさん:幼少期の経験でよかったのは、祖母の家と自分の家を行き来していたことです。祖母の家が銭湯を経営していて、土日は自分が店番をしていました。実家でも新聞は取っていたけれど、銭湯ってお客さんのために、いろんな新聞を取っているんですよ。


もちろん、小学生だから内容はわからないけど「あったら読む」感じで触れていました。背伸びして、店番しながらわかるものだけを頑張って理解しようと読んでいたな、というのを覚えています。


活字が本当に好きだったので、何も考えずに読んでいた可能性がありますけど(笑)。そこに、文字があるから読む、というか。


― 大学受験の時は、活字が好きという経験が生きましたか?


たくみさん:それは、あると思います。現代文がすごく得意だったので。自分が教育の仕事に就いてから現代文が苦手な子を見ていると、共通して言えるのは「今まで本を読んだことがない」とか「活字が得意じゃない」という子が多い。その中でも、一番現代文が苦手だった子は「マンガも読んだことがない」という子でした。


文字だけを読んでストーリーを追うのも難しいけれど、マンガのようにイラストがあってもストーリーが追えないのであれば、試験勉強はかなり厳しいと思います。「活字で苦労している子」を見ていると、自分のこれまでの経験を振り返ったときに、活字に多く触れてきたのは、すごくよかったのかなと思いますね。



4)「2020年度の教育大改革」って、そもそも何が変わるの? 

― 「読解力」は、これから始まる「2020年度の教育大改革」で求められる能力の一つです。たくみさんのお話からも「読解力」こそ、学力を支える土台になるのだとよくわかりました。

ただ、受験生や親御さんにとっては、「高大接続改革」と呼ばれる、高校の授業、大学の授業、大学入試、この三つを見直すという、この改革自体が、どういうことを目指しているかまだ浸透していない気もします。


たくみさん:そうですね。「大学入学共通テスト」は、方針は書いてありますが、例題が何問かあるだけで、試験に関する情報がほとんどないので、なかなかわかりにくいと思います。


― ポイントは、2020年度から「大学入学共通テスト」という大学入試が新しくなり、新「学習指導要領」がスタートして授業も変わる、ということですよね。キーワードは三つ。「思考力」、「判断力」、「表現力」を養うこと。

今回、40年ぶりの試験改変で、センター試験が来年を最後に廃止され、2020年度(2021年の1月)に「大学入学共通テスト」が実施されます。

「大学入学共通テスト」の大きな特徴は、国語と数学では記述式の問題が3問ずつ出題されることです。また、「読解力」を見るために、マークシート問題も統計、契約書といった複数の資料を読み解く問題や、「思考力」や「判断力」を測るための問題に傾向が変わる見込みです。



5)ヨビノリたくみ直伝! 「大学入学共通テスト」に向けた三つの対策

― 新テストを最初に受ける今の高校2年生や、その親御さんはどんな対策をすればよいでしょうか?


対策1:正しい情報の選択力をつけよ!


たくみさん:そうですね。試験に限らず、自分はいろんな場面でこれを言っているのですが、まず一つは、「情報収集」です。つまり、「正しい情報の選択」をすること。


従来のセンター試験は、情報がたくさん溢れていて、予備校にいかなくてもほとんど正しい情報が入手できる。「大学入学共通テスト」は、誰も受けたことがない。知らない状態から始まる。少しの例題があって、批判されてたりもするんですけど、これからもっと正しい情報が出てくると思うので、それをしっかり入手すること。基本的だけど、それがすごく重要。


自分で試験対策して勉強する、というのは難しいと思うので、受験直前の高校生は、教材をいち早く手に入れて対策すること。情報に敏感になって。それが一番、手っ取り早いです。


もし、親が完全サポートできるのであれば、受験全般の情報収集も新聞などから逐一新しい情報をチェックすること。あとは、それに合わせた塾や予備校に通うっていうのが効率的。


― 試験対策がすでに「教育改革」で必要とされる「情報収集」「判断」力が試されているという感じですね・・・。


対策2:やっぱり、基礎学力は徹底せよ!


たくみさん:二つ目は、今出ている問題を見るとそんなに難しくなるわけではないということ。だから、「基礎学力の徹底」。基礎を身につけることは、今までと変わらずに必要になる、と自分は思います。


今までのセンター試験でも基礎学力は必要だと言われて来たので、学校で勉強する一番基礎になるものを徹底してやらせる、というのは変わらずに大事だと思っています。


― 勉強を進める上で大事なのは、「つまづいたところまで戻って、完ぺきにすること」と言いますからね。


対策3:数学も国語も、まずは読解力を鍛えよ!


たくみさん:三つ目は、問題文を読み解く「読解力」対策です。いろんな生徒を教えてきて思うのは、数学の苦手な生徒の特徴は、「問題文が何を言っているのかわからない」ということ。


受験に近い高校生は、受験に関係ない本を読むよりも、受験に関係するものを読んだ方が早いと思います。数学なら多くの問題に触れるしかないと思うんですね。でも、その前の段階で何か手が打てることがあるとすると、活字に触れることです。


たとえば、数学が苦手な子は、本を読んだことがない、ドラマも最後まで見ることができない。ストーリーを追えないから「問題文が何を言っているのかわからない」ということがよく起きるんです。


数学の新しい問題文は、どんどん抽象的になっていくので、結果的に「問題が何を言っているのかわからない」となってしまう。「数学が苦手」なのは、「計算が苦手」という理由よりも、もっともっと前の段階でつまずいているケースが多いんです。


でも、自分がまさか問題文がわからなくて数学が苦手だと感じているなんて思ってもいないから、「数が出てきたから、苦手」と思い違いしているんです。


数学や算数が得意になりたいと思ったら、それこそ、「文字から正確な情報を拾う」っていうことをトレーニングする。そうすれば、少なくとも、「ぼんやりとした理由で算数とか数学が苦手」ということは、なくなると思います。


― 読解力がないから数学の問題が解けない、というのは目からウロコですね。


たくみさん:そうです。「文字から想像する力」はすごく大事です。だから、小・中学校から準備したい、ということであれば、最初の話につながるのですが、「いろんな活字に触れさせる」というのは、確実にいいなと思います。



6)「ネットに強い」は、試験対策の近道だ

たくみさん:国語の記述も数学の記述もすごく似たようなところがあって、共通点がすごく多い。とにかく、文章を書く習慣をつけることが大事だと思います。


今の学生さんは、140字のツイッターやSNSに触れているから、長めの文章を書く機会がものすごく減っている。だから、「読書感想文」を書かせるというのが、どちらにも効果があっていいなと思います。


― 読み書き、両方とも習得できますもんね。


たくみさん:自分が子どもの頃にやっていて、すごくよかったなと思うことがあって。それは、中学生の頃に、本の感想をブログにずっと書いていたことです。ネットとか新しいことがすごく好きだったんで、誰よりも早くブログを始めました。


今読み返すと恥ずかしい内容ばっかりなんですけど、すごく楽しくて、読んでくれている人もいて。ブログだと感想を書くときに1000字とかになったりするので、長い文章を書く練習になっていたと思います。


これからの時代、「ネットに強い」というのはすごく大事だと思う。新しい教材も書籍よりもネットの方が早いし、勉強系のYouTuberが現れて、新テストに対応する勉強法を発信してくれるはずです。


― ネットに強い、とは?


たくみさん:「情報を探し当てる力」が、まず大事だと思っています。でも、それを一番早く身につけるには、「発信する力」をつけることです。


何かを発信しようとすると最初は大変ですよね。どういうことを発信しようか、など「正しく調べないと始められない」。だから、そこにたどり着くまでに、「正しい情報を探し当てる力」が身につく。やっぱり、一番その情報に詳しい人は、やっている人だから。


たとえば、ネットを通じて、自分が読んだ本の感想を書いて公開するのは、文章を組み立てる練習になるし、興味をそそるしすごくオススメです。



<ヨビノリたくみ Profile> 

東京大学大学院卒業。学生時代は理論物理学を専攻しており、学部では「物理化学」を、 大学院では「生物物理」を研究。博士課程進学とともに6年続けた予備校講師をやめ、科学のアウトリーチ活動の一環としてYouTubeチャンネル「ヨビノリ」を創設。チャンネル登録者数は14万を超える。特技は将棋。AbemaTV「ドラゴン堀江」の講師としても活躍した。

ヨビノリたくみ Youtubeチャンネル



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